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ロバート・B・パーカーの私立探偵スペンサーシリーズを最近読み直してみたら、いくつかセルフビルドをするシーンが出てくることに気がついた。 「初秋」では、少年に自立心を培わせるために小屋を建てたり、「歩く影」ではボストンの郊外コンコード(W・ソーローの森の生活の舞台ウォールデン・ポンドがあるところ)にボロ家を買って、恋人スーザンと大改築を始めたりしている。
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私は台所のラジオでジャズを流していた。パールは柵で囲った原を歩き回って、汚いものを見つけてはその中で転がっている。ごみを全く意に介さないで、時折新しいにおいをみせびらかすために戻ってくる。表の窓を通してスーザンが見える。彼女は斧、柄の長い大ばさみ、糸のこ、なた、を持っている。枝を払い、切り、大ばさみとのこぎりを使い、時折手を休めて、ごみを収集してもらうための大きな山へ枝や葉を運んでいる。 |
読んでいて、おやっと思ったのは、糸のこを枝払いに使うかということだ。
原典を当たってみると、糸のこのところはbow sawと書いてある。
辞書を引くと、
■bow saw n. 弓のこぎり, 回しのこ(研究社英和辞典)
■bow saw : 回しのこ、弓のこぎり、糸のこぎり(英辞郎)
とある。初版が1994年とはいえ、枝払いに糸のことは、なかなか愉快ですね。
さて、ではbow saw、bowは弓だから弓のこぎりなんだろうが、そんな名前聞いたことがない。
google のイメージ検索でみると、オリジナルは木製で、H型の竪琴のような形をしていたようだ。刃が取り替えられるようになっていて、確かに糸のこのような細い刃もあるようだが、それで枝払いをするわけではない。 現在ではスチール製になっていて、こんな6インチの角材まで切り落とせるようだ。 日本でも弓鋸の名前で、薪づくり用の道具として輸入されているのを知った。
しかし、翻訳者というのは、あんな細い刃で枝を切ったらどんなことになるのか、想像できないのだろうか。