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ホモ・ファーベル(手の人)

ホワイト・オークの原木から大小の機械・道具を自在に使って、一気通貫でベンチを仕上げてしまう。いやはや恐れ入りました。これはもう「お見事!」としかいいようがない。

このオッサンの仕事ぶりを見ていると、開高健の次の一節を思い出す。

 

 

 それともう一つ、つくづく感嘆したくなるのは、この国の人びとの、老若男女を問わぬ機械との一体感である。ジャンボ・ジェットのパイロットであれ、山を削りとっている建設車の運転手であれ、彼らの血のなかにはガソリンが流れ、骨には炭素鋼が必須成分として入っているのではあるまいかといいたくなるくらい、彼らは機械を肉化している。タイヤの数が何十輪になるものやら、鋼鉄の倉庫が疾走しているのだとしかいいようのない長大かつ巨大なコンヴォイが轟々と地響きたてて擦過していくと、その風圧をくらってわがトヨタは走りつつグラリと揺れたり、車体が道路から浮き上がったりし、思わず眼をつぶってしまうのだが、つぎに眼をひらいた瞬間、その巨人車の運転席で楽々とハンドルを片手で操作しているのが、ときには中年女、ときには少女といいたくなるくらいのういういしい、頬のふっくらとした娘であるとわかり、感服の息を呑まずにはいられない。(中略)

日本人も機械を大事にする国民であるが、その大事がりかたは、いわば、家伝の名器を大事にする手つきに似ている。しかし、アメリカ人と機械は、アマゾン河畔のインディオとオウム、ヴェトナム人と水牛のような、いわば、主従関係ぬきのものである。シャム兄弟である。天成のホモ・ファーベル(手の人)である彼らは、たとえば馬小屋のよこの鍛冶屋を前掛けもハンマーもそのままでつれてきてコンピューターの前にすわらせても、ピタリとハマってしまうのであるまいかと思えてくる。
(開高健 もっと遠く!上より)

 

コメント (2)

kass:

いやぁ、感想を書こうかと思ったのですが、開高健の文章以上に必要がありません。オッサンも凄いし、開高健の慧眼ぶりにも恐れ入りました。この映像にこの一節を持ってくるyumさんにも…

yum:

kassさま

コメントありがとうございます。こんな色々な機械があったらいいですね。このでっかい蒸かし器に作品をどすんと入れ込んでしまうのには驚きました。

このMike Jarviという人の他の作品は、以下のサイトで見られますが、このベンチが一番すっきりしていていいですね。http://www.mikejarvi.com/

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2010年09月10日 19:50に投稿されたエントリーのページです。

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