鉃拐2
<鉃拐>や<仙人>は書物より絵のほうが表現に合っているのか、多くの画僧や絵師に描かれてきました。仙人がいつ頃、知識として日本に入ってきたのかは不明ですが、絵としてはおそらく日本にある最古の<鉃拐>を描いたのは顔輝で、至正25年(1365)の序をもつ『図絵宝鑑』に浙江省の人で、筆法奇絶の紹介があり、1300年初めに活躍していたとされます。日本には永正8年(1511)の『君台観左右帳記』に顔輝の記録が載っていて、その頃は多くの顔輝作品が輸入され、室町時代の絵画に多くの影響を与えた画家の一人でした。その作品も、この<鉃拐図>と<寒山拾得図>が東京国立博物館にあるのみとなっています。オチに登場する李白(701〜762)は、唐代の詩仙。「月下独酌」など酒を詠んだ有名な詩や「静夜思」「子夜呉歌」などが代表作。陶淵明(365?〜423)は南北朝時代の酒と菊を愛した詩人。「帰去来辞」「桃花源記」などを残しています。
参考に使ったこの噺のマザーテープの録音が昭和33年となっていて、当時すでに消滅していた有名な寄席の名前が織り込まれています。全盛期には各町内に一軒はあったという寄席も、この当時は志ん生、文楽、などそうそうたる名人上手が高座に出ていましたが、寄席そのものは衰退末期でした。現在は上野鈴本、池袋演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホールの四軒のみとなり、それも昔からの寄席の雰囲気を残しているのは新宿末廣亭だけとなってしまいました。いや、寂しいかぎりです。