庭のすみから、クチナシが甘い香りを夕やみの靄(もや)に漂わせている。
クチナシの植えてある辺りは、冬には凍土になるため、三株植えた一株は枯れてしまった。しかし、その寒さを耐え忍んだ二株は、今美しい白い花を咲かせている。
秋にとれる実を煮だした染料を使うと、どうしてこんな綺麗な色がでるのかと思うようなあでやかな黄色に布を染めることができる。
布だけでなくお正月に食べる栗きんとんも、クチナシで染めているようだ(今は合成着色料かもしれませんが)。
ただし、梔子色(くちなしいろ)という日本古来の伝統色は、クチナシで染めた黄色にわずかなベニバナの赤を重ね染めした色を指すようである。