佐佐木信綱作詞の唱歌『夏は来ぬ』は、子供におもねるところがなくて、なかなか格調が高い。5番まであるが、1番を引用するとこんな感じである。
卯の花の 匂う垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ
さて、この卯の花というのは、どんな花なのかずっと気になていたのだが、やっと分かりましたね。飲み屋だと、おからになってしまうが、ユキノシタ科の落葉低木ウツギの花なのである。
写真はご近所の生け垣からちょっと失敬してきて、挿し木にしたらついてしまったもの。まだ、ほとんどツボミですね。
この歌には、まだいくつか注釈が必要なところがある。
まず、「卯の花なんてぜんぜん匂わない」という疑問。「匂う=にほふ」は古語で「美しく咲いている。美しく映える。」という意味。よい香りがするというのは、「かをる」というのだそうだ。
2つめは「ホトトギスはどんな声で鳴くの。」我が霧想庵でも、近くで鳴くことがあり、姿は見たことがないが(カッコウに似ている)こんな声です。
3つめは「忍音(しのびね)って何。」広辞苑によれば「陰暦4月頃、ホトトギスがまだ声をひそめて鳴くこと。また、その声。」
小さいときは、なんだか意味が分からず歌っていても、何十年後かに疑問が解けるというのは、なかなか愉快なことである。