家から半径3㎞の範囲に、火の見櫓が確実に3カ所はあった。
いつの間にか、ひっそりと消滅して、現在はこの一カ所だけでなく、他の地域も全て消滅していた。
半鐘の音が、落語や唄で表現されていても、今では何のことか分からなくなっている。
毎年正月に保存テープで、五代目古今亭志ん生(1890〜1973)の十八番【火焔太鼓】を聞いて久しいが、火の見櫓が無くなっては、「半鐘はいけないよ、おぢゃんになる」のお〈ぢゃん〉の、半鐘を鳴らした時の音色の表現が,平成生まれでなくても知らない者があり、死語になりつつある。
また、美空ひばり(1937〜1989)のヒット曲で『お祭りマンボ』という唄の歌詞二番で、「おじさんおじさん大変だ、どこかで半鐘が鳴っている、火事は近いぞスリバンだ」の摩鐘(すりばん)は、火の元が近い場合に、半鐘の中を搔き回して鳴らすことをいった。
冬の夜中は特に記憶に残るようで、村や町内で近場の出火は、摩鐘を早撃ちで連打「ぢゃんぢゃんぢゃんぢゃん」、近火は三連打「ぢゃん、・ぢゃん、・ぢゃん」、遠火はゆっくりと二連打「ぢゃんーーー、ぢやん、−−−」、鎮火は間を置いて打つ音が、耳に残っている。