指物師だった養父の鉋やノミを、使わせてもらえないかと、座間にいる叔父に電話で聞いてみた。
叔父は長男で、職人にはならなかったが、養父の血は受け継いでいたようで、叔父が作ったという見事な出来の小箱を子供の頃に見たことがあった。
現在は85歳になり長年闘病生活を続けているので、さすがに手仕事からは遠ざかっていると思って頼んでみた。
帰ってきた返事は、引っ越しの際殆ど処分して手元に残っていないと言い張る。
そんなことはないだろうと、粘りに粘った結果、物置に放り込んであるという壊れたノミと鉋を、修理するからと平身低頭して送ってきてもらった。
女系家族の長男という特殊な性格は、同じ家族としてとことん身に染みた経験があるので、養父の道具を今後は大切に子孫に残して置こうと思っている。