「初秋」ロバート・B・パーカー著/菊池光訳 ボストンの私立探偵スペンサーは、そんな彼をメイン州フライバーグのキンブル湖畔に連れて行く。小屋を建てながら大工仕事、料理、ジョギング、ボクシングなどを教え込み、彼を一人前の男に仕立て上げていく感動の物語である。 はっはっ、単行本の帯には「ハードボイルド式教育」なんて書いてありますね。 以前もちょっと書いたが、スペンサーシリーズはセルフ・ビルドのシーンがいくつか出てきて興味深い。 1981年の作品だが、その当時アメリカでは基礎を作るのにボイド管を利用していたことが分かる。 |
日本のdiyショップの老舗ドイトができたのが1972年だが、ボイド管なんて売っていたのだろうか。
では18章の基礎を作るところを引用します。
私たちは基礎管用の最後の穴を掘っていた。 (中略) 「この穴はなんのためだっけ?」ポールがきいた。 「あそこに大きなボール紙の管があるだろう?あれを穴に入れて垂直に保持し、鉄筋コンクリートを詰める。次にその上に土台をおき、その土台の上に小屋がのるんだ。地下室用の穴を掘る方がいいんだが、この方が容易だ」 |
日本語を読んでるぶんには、読み飛ばしてしまうところだが、原文は
"See the big round cardboard tube over there? we put them in these holes andget them leveledand filled them with reinforced concrete. Then we put a sill on them and the cabin rest on them. It's easier than digging a cellar hole though cellars are better."
とある。
”get them leveled”というのは「垂直に保持し」ではおかしい。土台を載せる基礎用のボイド管なのだから、各ボイド管の「水平をだす」のが正しいやり方だ(ちゃんとthemと複数を使ってますね)。翻訳者としては気を利かせて意訳したのだろうが、まあ、やったことがないんだからしょうがないかもしれない。
続けます。
「なぜ?」ポールが土にシャベルをつっこんで持ち上げた。 (中略) 「地下室があれば、暖房炉を置く場所ができて床が温まるし、物置にもなる。このやり方だと、家は地面の上にのることになる。冬は家の中が冷える。しかしはるかに手間がかからない」 |
「暖房炉を置く場所ができて床が温まるし、」というと何だか床暖房みたいだけど、アメリカの家の地下室には大型のボイラーを置いて、温水を回して暖房している家が多いと聞く。地下室自体を温めるのではないと思うのだが・・・・・・まじめに考えると翻訳って難しいですね。
ちなみに原文は
”Cellar gives you places for a furnace makes the floors warmer”