リハビリ病院の入院生活に慣れた頃、看護師に無断で、ベッド脇に立ってパジャマに着替えていた時に尻餅を着いて大騒動(?)になった事がありました。
何故?左足が勝手に右側へ滑って行ったのか不思議でしたが、その答が理学療法の階段を降りる訓練で分かりました。
階段の上から下を見下ろして、唯一自由になる右手が杖で塞がれ、いざ降りるとなると結構恐怖を感じます。
自分では緊張しないよう頭で考えていても、体は正直に反応するもので、左足が絵のように右に、足先も内側へ回ってしまいます。
訓練士のI先生はもっと足幅を広くして降りるよう指示しますが、頭は指示しても体は反応してくれません。
現在もこの症状が顕著で、緊張した時や小用を我慢して歩いてトイレに向かう時など、左足が右足前で跳ね上がってしまいます。
半身麻痺を抱えた患者には、階段を降りることはおおごとで、転倒の恐怖を常に感じてしまいます。これはそう簡単には解決できません。
常に転倒しないよう自分の体に覚え込ませるほか方法はないようです。
転倒といえば、I先生が休みの時のY先生の助言が今でも役に立っています。
右ページのメモ描きの髭の人物で職人肌と身受けました。見習い生が数日で逃げ出してしまう事で評判でしたが、訓練生の教わる時の姿勢がいい加減でいたり、勉強不足の大甘のほうに問題があったと思っています。
この間違った評判で、患者のなかにはY先生の訓練を怖がっていたむくつけき親爺たちがちらほらいました。
私が教わっていた時は一週間耐え抜いた訓練生が居て、「君はもう、何処へ行っても充分務まる!」と、賞賛の嵐の若者もいたんですね。
このY先生の今でも心に焼き付いている助言は、
「足裏で大地を掴むように歩いて」でした。
お陰さまで現在も転倒を免れており、感謝しています。