一人暮らしを始めた頃から結婚まで、アパートにテレビは無かった。
そのためか、時間が空くと本を読む習慣が自然と付いていた。
ほぼ半世紀前から、古本やで買いあさった小説現代など、月刊読み物誌をばらして、小説の挿絵が目当てで製本を始め、製本は現在まで続いている。
一番最初に無線とじで出来たのは、「話の特集」誌に連載していた植草甚一の文とコラージュを纏め、一冊にして、目次やタイトルを手書きで、何から何まで手探りで作った簡易な製本だった。
それからを思い返すと、今まで手元にあれば小説だけでも2千冊?以上はあったと自負している。
潤沢にあるので、気軽に人に貸してしまい、貴重な本を無くしている。
司馬遼太郎の『覇王の家』の挿絵は天才・風間完さん、井上ひさしの『江戸紫繪巻源氏』はどこかユーモラスな絵の山下勇三、藤本義一の『鬼の唄』に、ダイナミックでインパクトある画風の田代光、等など、帰ってこなかった愛蔵本は無数にあり、思い返すとなんて馬鹿な事をと猛省が始まる。
写真の池波正太郎の代表作、『剣客商売』は連載開始から一年ごとに纏めたが、残念なことに5巻目は帰ってこなかった。また開始からではないが『鬼平犯科帳』も、数冊消えている。
貸した人が分かっている場合は、返却を頼むが、借りたことさえ覚えていないのが殆どだった。
もう2度と、こういった貴重な本は、家から出さないと決めている。