現在、窓枠の素材はサッシが殆ど使われ、通気性には何の問題が無いが、欲を言えば味気も素っ気もない。
職人が多いに腕を振るっていた半世紀前までは、どの家も窓に木枠が使われていた。
亡くなった姉の家は、小津安次郎映画に出て来るような家だった。
その姉が亡くなる今から20年前に、立て替えの話を聞いて、余計な話だが、勿体ないという理由で反対したことがある。
この家に毎日住んでみれば分かるが、締め切ったはずでも、外からの風どころか、塵芥は容赦なく入り込んでくるし、掃除の手間は毎日していない者には分からないと一蹴されてしまった。
立て替え日、この家の俯瞰図を描く為を口実に、写真を撮りに行って、解体された窓枠を貰っても良いか聞くと、即座に断られてしまい、この、窓枠ひとつとっても、大家族の嫁となった姉にはいい思い出はなかったようだ。
窓ガラスの形状は、磨りガラスや柄入り等が使われ、何気ないところにも、職人の技術に目を見張らされたことがある。
現在、ガラスの種類は以前と比べて大幅に減っていると聞いている。
この家の窓も、魅せられるという程度ではないが、確かに味がある。